雇用契約とは、雇用主と従業員との間で取決めた雇用条件の合意のことです。
雇用契約は、口頭または書面によって成立します。雇用契約には、明示的な条件と暗示的な条件が含まれます。
雇用条例の内容に反しない限り、雇用主と従業員の間で、契約の条件と制約を、自由に交渉し、合意することが許されています。
雇用条例によって従業員に与えられた権利、恩恵、保護を消滅させたり、減少させることを意図している雇用条件は、無効となります。
雇用契約の期間(Duration of Employment Contract)
雇用する前に、雇用主は従業員に対して、次の事項について詳細に明確に説明する必要があります。
賃金(賃金が出来高払い、請負、時間給、日給、週給、またはその他の方法で支払われるかどうかにかかわらず、賃金レート、残業時間レート及びその他の手当が含まれます。)
賃金の算定期間
雇用契約の解除に必要な予告期間
従業員に年末手当が支払われる場合には、年末手当の金額または按分額、及び年末手当の算定期間
雇用契約を書面で結んだ場合、従業員が雇用契約書を保管し、参照できるように、雇用主は雇用契約書のコピー1部を従業員に渡さなければいけません。
もし雇用契約書を書面で結ばなかった場合、雇用契約の開始前に従業員が書面を要求すれば、雇用主は従業員に雇用条件を書面に記載して渡さなければいけません。
雇用条件に変更があった際に、その雇用条件を単に提示した場合や、実際の強制力が伴う場合にかかわらず、雇用主は従業員に理解し易い方法で伝えなければいけません。
注意:
以下のような法律で付与されている権利は、雇用契約の条件によって見積もられた賃金を基礎として計算されます。
法定休日の手当(Holiday Pay)
年次有給休暇(Annual Leave Pay)
傷病手当(Sickness Allowance)
産前産後休暇手当(Maternity Leave Pay)
父親の育児休暇手当(Paternity Leave Pay)
賃金に関しては、雇用主と従業員の間で、以下のような事項を明確に理解しておく必要があります。
賃金に含まれる項目(例えば、コミッション、手当など)
賃金率
支払いの条件
支払いの取決め
雇用契約の期間(Duration of Employment Contract)
反対の合意がない場合は、全ての継続的雇用契約は、1箇月間の契約であり、かつ毎月ごとに更新する契約であると見なされます。
賃金および雇用記録(Employment and Wages Records)
全ての雇用主は、直近12箇月間において、従業員が雇われていた期間の賃金と雇用記録を、常に保管しておかなければなりません。
雇用記録には、次の従業員の情報が含まれている必要があります。
1.氏名と香港ID番号
2.雇用開始の日付
3.役職名
4.それぞれの賃金算定期間に対して支払われた賃金
5.賃金算定期間
6.それぞれの賃金算定期間に働いた時間数(該当する場合※)
7.次のような期間に関する付与日数、取得日、支払い明細
(1) 年次有給休暇
(2) 傷病休暇
(3) 産前産後休暇
(4) 父親の育児休暇
(5) 休日
8.年末手当の支払額及び算定期間(年末手当に該当する場合)
9.雇用契約の解除に必要な予告期間
10. 雇用契約の終了日(該当する場合)
※ 詳細については、労工処が発行している“最低賃金法の要約ガイド(Concise Guide to Statutory Minimum Wage”を参照してください。このガイブックは、労工処のWebサイトからダウンロードすることができます。また、労工処の各事業場でも入手が可能です。
賃金及び雇用記録は、雇用主の事業場または従業員が雇われている場所に保管しておく必要があります。また、従業員との雇用契約が終了した場合には、契約解除後から6箇月間は、賃金及び雇用記録を保管しておく必要があります。
注意:
雇用主は、法定権利を正しく計算するために、従業員の出勤状況、休暇、賃金などに関した適切な記録を保管しなければなりません。
労働者も、自身の権利と恩恵を守るため、出勤状況、休暇、賃金などに関する記録を適切に保管しておかなければなりません。
違反と罰則(Offences and Penalties)
上記の記録を保管していなかった雇用主が起訴されて、有罪となった場合には、最高で罰金1万香港ドルが課せられます。
労工処のオフィサーは、上記記録の調査、関係者への質問、または、雇用条例に違反する証拠と疑われるすべてのものを押収することができます。労工処のオフィサーの要求に従わない者が起訴されて、有罪となった場合には、最高でHK$10万の罰金、および1年の禁固刑に処せられます。