雇用条例における雇用の保護のパートの目的は、従業員を解雇すること、または雇用契約の条件を変更することによって、雇用主が雇用条例の規定を免れようとするのを防止することです。
雇用の保護に対する要件および救済(Eligibility and Remedies for Employment Protection)
従業員は、以下の状況において、雇用主に対して救済を請求することができます。
解雇または雇用条件の変更に対する有効な理由(Valid Reasons for Dismissal or Variation of the Terms of the Employment Contract)
解雇または雇用条件の変更に対する5つの有効な理由は、以下の通りです。
従業員の行動
業務遂行に対する従業員の能力または資質
余剰人員の削減または、その他の事業遂行に起因する理由
法的要求(例えば、従業員を雇用契約時の職位で勤務を継続することや、雇用契約時の条件を継続することが、法律に反する場合)
その他の実質的な理由
雇用の保護に関する救済(Making a Claim for Remedies for Employment Protection)
救済を請求する従業員は、解雇または雇用条件の変更があった日から3箇月以内に、書面での通知を雇用主に提出する必要があります。労工処長が許可する場合、この期日(3箇月)は、さらに6箇月を限度として延長されることがあります。従業員が労使調停所(Labour Tribunal)に請求を申し立てようとする場合、雇用契約の解除日または雇用条件の変更日から9箇月以内に申し立てなければいけません。
雇用の保護に関する救済(Remedies for Employment Protection)
雇用の保護に関する救済は、復職、再雇用、または雇用契約終了時の支払いの裁定を含み、労使調停所(Labour Tribunal)が決定します。
復職または再雇用の命令について(Order of Reinstatement or Re-engagement)
復職命令とは、従業員を解雇しなかったものとして扱うこと、または従業員の雇用条件を変更しなかったものとして扱うことを、雇用主に要求する命令です。
再雇用命令とは、雇用主、雇用主の後継者または関連会社の雇用主が、雇用契約時の条件と同じ条件、またはその他の適切な雇用形態で、従業員を再雇用しなければならないという命令です。
復職命令または再雇用命令は、雇用主と従業員が合意した場合にのみ命じられます。
従業員が復職または再雇用を命じられた場合、従業員の勤務暦および年金の権利を含む従業員の権利および特典は、復活させなければいけません。また、雇用期間の継続性も中断されていないものとして扱わなければいけません。
雇用主は、雇用条例のもとで、従業員が解雇されなかった場合、または雇用条件が変更されなかった場合に得られたであろう未払金および法的権利を、従業員に付与することを命じられることがあります。反対に、従業員は、解雇または雇用条件の変更のために、雇用主が従業員に支払った金額を、雇用主に返金するように命じられることがあります。
雇用契約終了時の支払いの付与(Award of Terminal Payments)
復職または再雇用されない場合、労使調停所(Labour Tribunal)は、雇用主が従業員に対し、公平および適切に雇用契約終了時の支払い金額を裁定します。
雇用契約終了時の支払いとは、以下の3つを意味します。
解雇されたことによって、受領権利があるが、まだ支払われていない、雇用条例にもとづく法的権利
従業員の雇用が継続していた場合、雇用条例のもとで享受できたと合理的に推測できる権利
雇用契約のもとで、従業員に支払われるべきその他の支払い
従業員は、たとえ勤務年数が雇用契約終了時の支払いのために必要な勤務年数に達していない場合であっても、雇用契約終了時の支払いが行われる場合があります。そのような場合、雇用契約終了時の支払は、実際の勤務年数に従って計算されなければいけません。
補償の裁定(Award of Compensation)
従業員が非合理的および違法に解雇された場合、かつ労使調停所(Labour Tribunal)が復職または再雇を命じなかった場合、雇用主は従業員に対しHK$15万までを限度として補償金が支払われることがあります。
補償金額の決定において、労使調停所(Labour Tribunal)は、以下を含む状況を考慮します。
雇用主および従業員の状況
従業員の雇用期間
どのように解雇が行われたか
解雇の結果として、従業員が被った損失
従業員が新しい職を得られる可能性
従業員が解雇のために、何らかの過失を追うべきかどうか
雇用契約終了時の支払いを含め、解雇に関連して従業員に受給権がある全ての支払い
例外(Exclusion)
性別、障害、家族状況、または人種によって解雇された場合の請求には、雇用条例の本章は適用されません。従業員が、性別、障害、家族状況、または人種によって解雇された場合、以下の法律に基づく救済を請求することができます。
性差別条例(Sex Discrimination Ordinance)
障害者差別条例(Disability Discrimination Ordinance)
家族状況差別条例(Family Status Discrimination Ordinance)
人種差別条例(Race Discrimination Ordinance)